こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

ギルバート・グレイプ


東京グローブ座にて観てきました。
演出:G2。
主演:丸山隆平


舞台だし、G2さんだし、
だいぶ映画とは違う雰囲気になるんだろうなと想像しながら
新大久保へ赴きましたが、
想像したのとはまた違った独特な空気が
作品全体に満ちていました。


以下、ネタばれになるかもしれないので、閉じときます。




映画よりもずっと陰鬱で痛い。
ギルバートの感じている閉塞感も、
グレイプ家の悲惨な状況も、
エンドーラという田舎町の裏にはびこる悪意も
やけにリアルに迫ってきて、
場面が重なるごとに息苦しくなった。


もしかしたら、映画の持つ、ふんわりして寂しい、叙情的な世界よりも、
こっちのほうが原作に近いのかもしれないなあ。


G2さんは、いつもなにかしら冒険をする。
1幕では、ギルバートの押さえ込んだ心情を表わすために
ひっきりなしに字幕が出るんだけど、
台詞を聞きながら文字を読むって難しいんですね。
情報量が多すぎて、
登場人物たちの芝居が追いきれない。
ひとこと、ふたことだけヒントをくれれば、
あとは、マルちゃんの表情を見ればわかるのに。


ただ、ギルバートがだんだん
自分を解放できるようになるに従って
字幕は減っていきます。
最後には、出なくなった(ような気がする、うろ覚え)。
1幕より2幕のほうが、客席も楽になっていく。

つまり、
息の詰まりそうな毎日を送っていたギルバートが
少しずつ、不器用に「よい方向」へ向かっていくのを、
観客も一緒に体験させてもらったのかな。


…とか思うと、G2演出にヤラレタような気もしてちょっと悔しい(笑)。


マルちゃんのギルバートは、
家族を憎み、それ以上に愛している気持ちの葛藤がよく出ていました。
特に感じたのは、父親への気持ちかなあ。
彼の死について背負ってしまったトラウマと、
その、優しいけれど弱かった父親にどんどん自分が似ていく恐怖、
みたいなものがとても強く伝わってきた。


あんなに長時間ふざけないでじっとしているマルちゃんを
見ることができたのも、貴重な体験でした(笑)。


印象に残ったのは、
いろんな意味でおっきくなっていた中尾明慶くん、
伊藤裕子ちゃんの小顔っぷり、
寿ひずるさんの歌が聞けてラッキー、
菅原永一さんの足が今日も長すぎたこと。


それと、二村周作さんの装置がよかったなあ。
傾いたグレイプ家の外壁をあらわすような
細い木材がところどころいびつに積み重なっていて、
でも、ぬくもりと品があって。
二村美術を見るたび、こういうものにも
創る人の人柄が出るんだなあと、いつも思う。


ギルバート・グレイプ

ギルバート・グレイプ