こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

夕暮れの天王洲は
美しいよね。
運河のお向かい、
建築中のマンションの一室で
ときどき光がスパークしてました。
大工さんのあがりって何時なんだろうか。
お疲れさまです。


昨日、銀河劇場で
ミュージカル「スコット&ゼルダ」が開幕しました。


母がよく
 
「フィッツジェラルドは
 ゼルダの才能を妬んで小説書かせなかったのよー。
 ゼルダかわいそうねえー」

とか言うのだが
それってちょっとロダンとカミーユの話とまざってるよね、
結局どういういきさつだったんだっけ…
って毎回うやむやになってたのが、
ようやく整理できました。
 

スコット・フィッツジェラルドと、
ゼルダ・セイヤー。
自分の信念をまっすぐに信じてた
若くてハンサムな小説家と
好奇心旺盛でひと一倍自由を求めてる
町一番のかわいい女の子が
出会ってしまえば
それはもう、どうしても引き合ってしまうわけでね。
 

成功して、大金を手にして、
時代の寵児になったとしても、
たぶん、昇ったのと同じ速度で堕ちてしまうのが
社会の法則なのかもしれないですね。
スコットは、ピュアだからこそ
自分の残酷さにいつまでも気づけないし、
ゼルダの生命力はそのうち
強すぎる自己承認欲求に化けて軌道をはずれてしまい、
お互いがお互いを破滅させるような結果になったけれども、
それって悲劇だったのかな。
出会わなかったほうがよかったとは
不思議と、思えない。
 

外野だからそう思うのかもですが。
 

舞台は、
ゴシップ記者・ベンが
ゼルダの入院している精神病院に取材にきて
彼女の話から過去を回想する、
というつくりになっています。
 
まずベン役の山西惇さんが軽妙で
観客の目線に降りてきてくれるような居方で
ほんとに優しい。
方々で活躍する中河内雅貴くんのメガネ萌え。
もちろん、ゼルダ役の濱田めぐみさんが
信用できるから、作品が成立してる。

そして、スコット役のウエンツ。
髪をなでつけると
剃り込み具合がフィッツジェラルドそっくりだったり
白さを生かした幽霊演出だったり
そういうツボを脇に置いておいても、
なんていったらいいのかなー、
歌声の独特な甘さが
ミュージカル特有の夢を見させてくれるし、
突然憑依したみたいに
絞り出すようにセリフを吐き出す瞬間があって
胸が震えました。

つかこうへいさんの「蒲田行進曲」で
スター役者・銀四郎のセリフに

「スターの華というのはな、
 生きていればいいことがあるかもしれないって
 信じさせる力のことだ」
 
みたいなのがあるんだけど、
こういう役者さんをみると、いつも思い出す。

そして、装置がおもしろいなっておもったら
やっぱり二村周平さんだよね。

 
ローリング・トウェンティ。
アメリカがアメリカだった1920年代に
ご興味がある方は
ぜひぜひ、足をお運びください。