こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

大奥おぼえがき(後)吉宗編


2011年02月01日注記:
これは、映画が封切られてすぐの10月に
別のブログに書いた、映画「大奥」の感想です。
前編からの続きです。


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「大奥」おぼえがき吉宗編(吉宗公ご着位からさいごまで)


=====ネタバレ満載です、ご注意ください!=====


●世代交代


幼少の七代将軍・家継が亡くなってしまいます。かわいそうに。
間部詮房役の菊川怜ちゃんがめっちゃきれい!
…なんだけど、以前「ジャニ勉」ゲストのとき、
フルーツパイにコーフンして
マンゴゥ♪!!…ってやってたのを思い出し、つい笑いが!
心の中とはいえ、まじめな場面で何度も笑っちゃって
ほんとに申し訳ない…。


●暴れん坊将軍登場!


白馬で草原を駆ける吉宗って、
松平健さんの専売特許じゃなかったんですね(笑)。
カッコイイ、吉宗!!
紀州からお江戸へデビューであります。
贅沢に慣れた間部を解雇するときの「さがりゃ!」が、またシビレル…。
そばに置くのは口は若干うるさくても信頼のおける
越前大岡(板谷由夏)と、加納久通(和久井映見)。
和久井サンのこの久通が、またいいんですよねえ〜。


久通「(からかい口調で)おのぶさま?」
吉宗「(ムッとして)上様と呼べ」


…いい(笑)!


●ご昇進おめでとう


さてさて、水野のほうは
藤波様のとりはからいにより、なんといきなり
御目見得以上、しかも、御中臈にスピード出世。
御三の間のいじめっこたちも手のひらを返したように頭をさげるのがおもろい。
阿部サダヲ演じる杉下が、水野の身の回りのお世話をするお役として
一緒についてきてくれます。
とっても心強いし、杉下にとってもこれはまた、
一生、御目見得以下を覚悟していたところに思いがけない環境の変化。
感謝の気持ちをきちんと伝える杉下と、受け止める水野の信頼関係。
大奥の中での数少ない誠実なつながりに、気持ちがスカッとします。
サダヲとニノだからのバランスの雰囲気もあったなー。
とっても、好きでした。


香道


新しい顔として紹介され、御中臈のみなさんとともに
三種香を体験する水野。
お香の聞き方の説明を受けていちいち驚いたり
おもしろがったりするニノがかわいい!
初めて聞く言葉ばかりだったけど、おもしろい、三種香って。
3種類のお香を順々にかいで、
同じ香りがあったかどうか当てるゲーム。


水野が言い当てた【孤峯の雪】は、2のみ異、1・3が同。
あとは、


【隣家の梅】1・2が同、3のみ異
【緑樹の林】1・2・3すべて異
【尾花の露】1・2・3すべて同
【琴の音】1だけ異、2・3が同


風流だ…しかし、みんな暇だな(笑)。


で、勘も筋もよかったらしい水野が
初めての三種香でちゃんと正解を言い当てたので、
藤波さまも松島さまも満足そう。
しかし、なんで水野が優れていて満足なのか。
松島さまなんて、嫉妬とか焦りとかないのかな、とか
いろいろ思いながら見るわけですが、
これは、あとになって理由がわかるのです。


●将軍、お忍びでご城下へ


正直、吉宗とSP三郎左の関係にきゅんきゅん(笑)。
たぶん、男女逆転という設定のせいだと思うんだけども、
この大奥のまわりで起こることすべて、
男女の関係のほうが障害を持ってるわけです。
祐之進とおのぶにしろ、
吉宗と三郎左にしろ(ここは別に恋愛関係じゃないのかもしれないけど)。
だからかえって、きゅんきゅんくるんですよね。
ともあれ、吉宗公がお忍びで江戸の町へ下り(やっぱり暴れん坊将軍だ)
そこで最終的に目にした下々の者たちの生活の惨状にショックを受けます。
ちなみに、活気のあるまっぴるまの中心地で
おのぶが店の前に水をまいていて
それを将軍のお足元にかけてしまうのですが、
そのときの吉宗の台詞、


かまわぬ。おなごは、そなたのように快活であるべきだ。


みたいな台詞がまたねー!シビレル!
祐之進が奥へあがってしまって絶対にさびしいのに、
それをふきとばすようにことさら元気にがんばっているおのぶも愛しい!


●藤波さまと松島さま


あはははは(笑)。
佐々木蔵之介+玉木宏、
スラッとした美男の、超絶色っぽい場面。
だけどめっちゃビジネスライクでもある場面。
蔵さま、「女は怖いのう」とかどっから声出してんだ(笑)


●お針子さん登場!


垣添、再登場!
待ってた、中村蒼くん!!ああ〜かわいい。
廊下できゃーきゃーだったあの子が、お針子の仕事のことになると
アーティストなプロ根性を出してくるのが頼もしい。
そうして、垣添がつくってくれた袴は、
black on black の、超絶シブイ、上品でおしゃれな1点モノ。
なにか礼をしなければ、という水野に、
かわいらしい「思い出」を所望する垣添
きれいな場面だったなあ。
ひとつも狙った感じのない、せつない、青春の味。
中村くんの垣添の役作り、ほんとうに的確で胸にしみました。


そのあと、水野のあわあわした様子に
どうしても笑いがとまらない杉下が最高!
この場面、全部大好きです。


●総触れの日


色とりどりの、ほんとに馬鹿馬鹿しいくらい派手な格好をした
美男がひしめく廊下に、
垣添がつくってくれた真っ黒な袴姿で登場する水野。
奇をてらったの、貧相だのと陰口をたたかれつつ、
藤波は水野に、いい感じの座り場所を斡旋してくれます。
いよいよ、上さまのおなり。
映画がはじまってすぐのあの場面に、ここで回帰するわけですね。


いったんは水野の前を素通りした吉宗。
しかし、裾を踏んでつんのめった公方様に、
つい噴き出してしまう無礼者がひとり。


細田よしひこくん。
…じゃなくて、御中臈のひとり、瀬川。
細田くん、最初っからいい味出してるんですよね。
このあいだ、舞台『ガラスの仮面』で見てきたばっかりなんだけど、
すっごくかわいい桜小路くんだったんですよ。
それがこんなすっとぼけな役やってるんだもん…
眉毛もなんか太くておかしいし、ほんま、おもろい!


ともあれ、この瀬川をかばった水野を、
公方様がとうとう、見初めるわけでございますが。


=====ここからさらにネタばれです。ご注意ください!=====


●真実


公方様にみとめられる、すなわち
初めてのお相手に選ばれた水野ですが、
しかし、ここにきて水野は、
この役についたものは(白字に反転しておきます)、
公方様のお体に最初に傷をつけた罪人として内々に首をはねられる
ということを、はじめて聞かされます。


…そういうことか!!


原作を読んでいなかったこともあって、
そういうことかって、何度もうなずいてしまった。
藤波と松島は、水野を使い捨てたその先を見据えていたから
あんなふうに余裕だったんだ、とかいうことがここで初めてわかって、
もう、なんていうか。ふう。


けれども水野は、もちろん断れるわけもないんだけども、
その役目を負うことによって
実家にも報酬と名誉がもたらされることを重々確認したうえで、
あらためて覚悟し、引き受ける決意をします。
水野がハメられたこと、この運命に対して杉下が激昂してくれるのが救い。
そして、庭先でひとり、
こんなことなら、おのぶと寝ちまえばよかった、
好きだ、惚れてるっていっちまえばよかったと悔やむ水野がせつない。
おのぶと祐之進の関係が無邪気だったからこそ、
その後悔がせつなすぎて、ほんとに苦しい場面だった。


●その夜


おごそかに準備をする水野。
薄化粧をして、目じりに紅を引いてもらうのがすごく印象的。
舞妓さんや芸妓さんも、目じりに紅だけを入れますよね。
化粧って、これがいちばん色っぽいのかな。
寝所にいる御伽坊主の浅野和之さんに、またこんなときなのに大爆笑。
なんでもやるねえ〜浅野さん。大好きだ。
そして、ことの次第を見守るために
御簾のこちら側に藤波と松島がいるんだよ…。
マリー・アントワネットとかエリザベートとかもそうだけど、
どうしてこう、なんていうか、
うーんいずこも同じなんですねえ。偉い人ってたいへんだ。


しかし、このときの吉宗と水野の会話、もうずっと泣けてなけて。
吉宗、やさしいんですよね。
彼女の名前が「おのぶ」だと聞いて、水野は
今宵一夜、「おのぶと呼ぶのを赦してほしい」と懇願するのです。


●翌朝


朝寝する水野。
吉宗公は早起きしてすでにご公務につかれ、
水野の処遇をあれこれ考えながら、三郎左に調べ物のお願いごと。
呼ばれてすぐ「は!」と天井裏から返事する三郎左。
素敵だ(笑)。


●思い出の鼻緒


クライマックス。
祐之新が、別れの朝に境内で直してくれたおのぶの下駄の鼻緒が
太鼓橋の上で切れます。
いやだよ、縁起でもない。
と笑って両足とも下駄を脱ぎ、足袋のままかろやかに橋を下っていくおのぶ。
そのころ水野は…。


●帰宅


水野の遺髪を持って水野家を訪れる三郎左。
涙する家族。ぐっとこらえる母上。
っていうか、三郎左、忙しい…。


●【おのぶの墓参り】


物語は、ラストに向かって収束していきます。
この場面。あああ〜(感涙)!って感じだ。


●リストラクション、そして…


そして江戸城ではまさかの展開。おみごとです、公方さま!!
大岡と久通にちょこちょこツッこまれながら、


さて、これからこの国をどう動かすか…


だめだ、ほんとうにしびれてもうた。
こんな政治家がいまの日本にいてくれたら!!



エンドロールをみながら思ったことは、
いいとか悪いとか別にしても、
とにかく、みんなそれぞれに必死で生きてたんだなって、
そういう感想でした。
松島様だってそうだよね、最後の台詞には、
口惜しさだけじゃなくて
圧倒的に人間性で勝っていると認めた相手(吉宗)に対しての
賛美がこもってたし、
あと、途中で七代将軍が亡くなって大奥入れ替えかっていうとき、
もしかしたらこの人、ほんとうのほんとうは
こんな人生は降りて城下に帰りたいんじゃないかなとか思ったり。


ニノは、ほんとうに、最後までニノでした。
水野祐之進という優しい青年の、
ちょっとのんきでこまっしゃくれていて、
がんばりすぎず、でも手を抜かず、
運命を見方につけてしまうような圧倒的な生命力みたいなもの、
それはニノそのものだったように思う。


それと、鶴岡。


ニノが、なんか雑誌の記事で鶴岡のことを
「起承転結の、転結しかない人生だったね」っていってた(笑)。
まさにそんな濃密な、ひとりの青年の最後の数ヶ月を、
おおらかな視点から演じることのできたたっちょんは、
やっぱりすごいなって思います。
誰に知られることもなく命を散らしていった鶴岡だったけど、
彼の生き様もまた、吉宗のとったこの「決断」に
直接ではないにしてもどこかでひとつ、役目を負っていたんじゃないかなって、
歴史ってそういうものなんじゃないかなって、
そんなふうに思ったりもしました。


疫病で死んでいった名もない男たちも、
心を痛めた女たちの苦しみも、
ひとつひとつがすべてつながって、なにかの布石になっているのかも。
深い映画だったなって思います。




なんでこんな語りたくなるんすかね、この映画。


っていうか語りすぎですね。すいません。