こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

ナオミ、後ろ後ろ!

ピーター・ジャクソン監督の映画『キング・コング』は3時間余の超大作。ヒロイン・アン(ナオミ・ワッツ)がまあ走ること。ネグリジェに裸足でジャングルは辛いっすよね!あっちからもそっちからも恐竜が出てきて、ほとんど「志村、後ろ後ろ!」な世界なんですが、それを救ったのがコング。巨大な獣と生贄、という関係を脱してだんだんと心を通じあわせ、崖の上から並んで夕日を見るふたり。ロマンチックです。アンが胸をトントンと叩きながら「Beautiful…」というのをコングは理解して、後にエンパイヤ・ステートビルの頂上で同じことをやるんだこれが…(涙)。ナオミ・ワッツの演じるヒロインはとても勇気があってコケティッシュ。体力もありそう、だってあんなにふりまわされたら普通なら三半規管か内臓があっというまにやられてしまいます。ボードビリアンという設定も効いています。きれいだし、見ててぜんぜん飽きないし。脚本家ジャック(エイドリアン・ブロディ)は、軟弱文系青年がどうにかコングと対等に張り合おうとしているのが応援したくなります。映画監督カール(ジャック・ブラック)は”とんでも映画バカ”として悪役を一身に背負い大健闘。軍隊あがりの黒人船員と少年ジミー(ジェイミー・ベル)の絆ももっと見てみたかった。ジェイミー、あいかわらずビリンガム訛りバリバリでかわいいなあ。船上シーンでほんの一瞬だけどヒロインと一緒にタップ風ダンスを踊る場面があって、『リトル・ダンサー』以来のダンス姿がとびあがるほど嬉しかったです。港を出るときうさんくささ満載だった船長(トーマス・クレッチマン)が意外にいい人だったのには笑いました。コングの特撮は『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムに続いてまたしてもアンディ・サーキス頼りなわけですが、彼はコングの他にまかない船員のランピーも演じていて、結局ヒロイン救出ツアー中にエイリアンそっくりの怪物花に食われてしまいました。お疲れさまアンディ!しかしあれ、ホントに『エイリアン』なんだよね。と思ってみると、この映画のなかには『ジュラシック・パーク』や『ロード…』はもちろん、ほかにもいろんな映画のモチーフが入れこまれていることに気づきます。それは、エンドロールの最後にでた「この作品を、オリジナル版の制作スタッフに捧げます」というメッセージで納得。あの時代に持ちうる限りの技術と空想力を持って撮りあげた初代『キングコング』は、それを見た若い才能を触発して、その後の名作をどんどん生みだすきっかけになっているんですよね。ピーター・ジャクソンもそのひとり。だから、彼が盛り込んだこのモチーフは、生みの親への感謝をこめた作品的カメオ出演なんだと思う。映画人って、かわいいよなあ。