こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

おとったん

神田の岩波ホールで映画『父と暮せば』を観た。


原爆から3年後のヒロシマに”暮らす”
父=竹造と、娘=美津江の4日間を描いた
井上ひさし氏のふたり芝居を映画化したもの。
何年か前に観た舞台も胸に深く残ったけれど、
今回の映像もとても辛く、優しく、温かいものでした。


原田芳雄さん演じる竹造には笑わせされて泣かされて、
あのじゃんけんのシーンには、
今すぐ家に帰って親孝行のひとつでもしないと
どうにも申し訳ないような気持ちにさせられる。


美津江役の宮沢りえちゃんのたたずまいの儚さというのは
ルックスによるところが大きいわけですが、
一時期のあぶなっかしさみたいなものは随分なくなった気がします。
あの声で、


「おとったん、ありがとありました」


を言われるともうそれだけで泣きたくなる、
不思議な女優さん。


芝居だと親子の会話の中にしか出てこない
「木下さん」役の浅野忠信さんがまた朴訥。
一緒に観たともだちが、
「木下さんとおとったんの雰囲気が似てた気がする」と言っていて、
なるほど美津江はそれで木村さんに惹かれたのかもしれないと思った。


美しくて静かで、とても雄弁な映画だと思う。
もっともっともっと、いろんな国のいろんな人に観てもらわなければいけない。