こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

かこちゃん

窓口でチケットを買おうとして、

「『ふざ…』えっとあれっ…ふ…『ふきげんな過去』1名…」

タイトル「ふざけんな過去」だと思ってた。
あぶない。
 
前田司郎脚本・監督、映画『ふきげんな過去』。
 
毎日がつまらなくてしかたがない高校生
果子(二階堂ふみ)の暮らしに
突然「生還」した
死んだはずの叔母(小泉今日子)
 
という4行で、
見ないという選択肢がなくった1作でございます。
 
舞台が北品川というコアさ。
 
私は基本的に
若さを無条件に美しいとは思っていないし
反抗的なティーンエイジャーなんか心底嫌いなはずなのですが、
「つまらない」とふてくされる果子の佇まいは愛らしく感じました。
二階堂ふみの強いまなざしに、
根底にある
まっすぐな優しさがにじみ出る。
帰ったらかならず「ただいま」っていう子は、ぜったい、いい子だ。

自分や家族、近所の人たちが日々対峙する悲しみを
間近に見てきた彼女は、
それにつかまって溺れてしまうのか、
まるでなかったことのようにやりすごすのか、
自分はどっちの人間なんだろう…みたいなことにすごく怯えて
混乱しているようにみえました。
 
あいかわらず、すさまじい「あるある」だらけの
前田さんの脚本も冴え渡っていて。
 
果子の実家がやってる「豆料理屋」の料理人、野村さんについて
「住民票だってあるのよ。…手作りだけど」
とか(戸籍だったかな?)。
 
ポエミーな存在感の高良健吾が
キレまくった果子に
「あんたなんか境遇が劇的なだけでものすごく薄っぺらい!」
とディスられて、
あのギリシャ彫刻のような顔で泡食っていたりとか。

あと、その赤ちゃん絶対人形だろっていう謎演出…。
 
これまでの前田さんの映画でいちばんツボッたのは
『ジ、エキストリーム、スキヤキ』で
仏具屋の女店員さん(内田滋)の
 
「…釈迦でございます!」
 
だったんだけど、
まだまだ出るよな今後…。

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