こまりさんの、はらぺこ手帖

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

パンチ

パンチ。
私は、勤め先の4階にある売店の
いちばんえらいおばちゃんを、
心のなかでそう呼んでいる。


パンチパーマだからである。


パンチには店舗運営のセンスがあり
彼女がことこまかに在庫チェックをしている陳列棚はいつも
新商品と定番がいい具合に揃っている。
しかし、パンチは接客には著しく向いていない。
夏ごろ、どうやら多数のクレームを受けて
ようやく「ありがとうございます」を言えるようにはなったが
ただひたすらに「ありがとうございます」を繰り返すその無機質っぷりは
むしろちょっと怖かったりするのである。


ただ、パンチはなにかで気が向くと
突然話しかけてくる、という都市伝説もある。
その髪留めどうなってるの、的な
おしゃれの話題が好きらしく、
話しかけられる人は主におしゃれ女子に限られる。
ちなみに私は、パンチにとって
そういった意味でまったくインパクトのない存在らしく、
利用するようになって半年というもの
支払いカードのかざしかたに駄目だしされた以外は
話しかけてもらった経験はなかった。


それが、さきほどである。


朝から、骨まできしむような本格的な風邪で
死ぬ寸前だった私は、
すこしでもビタミンを摂取しようと
フルーツジュースを買うことにした。
グレープフルーツにしようかアセロラにしようかと
棚をみあげていたところ、後ろから


ポカリスエットにしなさい」


パンチである。
ついに、パンチに話しかけられた。
おしゃれの話ではないが
あのパンチが、私に話しかけている。


パンチ「風邪にはポカリがいちばんいいんだから」
私  「え、そうなんですか」
パンチ「点滴と同じ成分なんだから」
私  「あ〜のど乾いてるときなんかにも…」
パンチ「のどじゃなくて点滴のこといってるのよ」
私  「あ、すいません」
パンチ「薬飲んでるんでしょう」
私  「はあ…」
パンチ「だったらポカリにしなさい」


そんなわけで
果汁ゼロのポカリをかたわらに
午後の作業にいそしんでいます。
午前中よりちょっとましになってきた気がするのは、
風邪薬のおかげなのか、
それとも、ポカリが効いているのか。