こまりさんの、はらぺこ手帖

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

ふとレスリーのことなど

以前、うちのそばには
プレノンアッシュという映画会社の事務所があって、
通りに面したコンクリ打ちっぱなしの外壁の
ぐっと高いところに
大きなポスターが2枚かかっていました。
両方とも香港映画「ブエノスアイレス」のひと場面。
タンゴを踊る人影がぶれ気味に映る1枚も、
ぱーっとした青空の下で睦まじいほうの1枚も、
なんか朝の通勤路には微妙なセレクトではありましたが
それでも「おはようレスリー様」な気持ちで見上げながら
駅へ急いでいたものです。


その後、その映画会社はどこかへ引っ越し、
そしてレスリー・チャンは突然に逝ってしまい、
ファンの手元には彼がスクリーンに残した
たくさんの笑顔やら泣き顔やらしかめっ面やら
そんなものだけが残りました。
レスリーの映画はいつも刺激的だった。
まじめな役もやってるはずなのにねえ、
どうもレスリーの印象っていうのはどこか
わがままで気分屋でだらしがなくて、
なのに思いがけないところですごく優しかったりして、
こういう人のそばにおったら駄目人間になってしまう、
いやもう駄目人間になってしまってもいいか、
とか思わせるような魔力を持った人でした。


でも映画ってやっぱりいいね。
何年たっても、誰がどうなっても、
繰り返し見ることができるもんね。
舞台はそうはいかないから、
作り手たちにはいつも、いつまでも
元気でそこにいてほしいのだ。
次はなにを見せてくれるのか楽しみにしていた舞台役者が
ふっつりと消えてしまうのはしんどい。
ただ、しんどい。


レスリーといえば「覇王別記」舞台化なんすよね。
ああ、なんでよりによってこの作品…
作り手のみなさんが元気で
次があるだけよしとするべきだろうが、
あまりにもしんどい(笑)。