こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

ハリソンて…

ようやくたどりつきました、夏の歌舞伎座
気づけば8月も残りわずか、
今日しかもう時間ないじゃん、
しかも第一部しか観られない…。
ええい、お桟敷奮発。
おやつはもちろん2階の売店で売ってる
あんず入り白玉ぜんざいさ。


朝いちの演目は『磯異人館』。


生麦事件薩摩藩士がイギリス人を斬った)から4年後の
薩摩藩の産業科学工場が舞台で、
のっけから装置が洋館でびっくり!
ストーリーがなんとなく、歌舞伎座というよりは
芸術座か三越劇場っぽくてリアルだったため、
ガラス作りにはげむ若者、精之助(勘太郎)と
琉球のお姫さま、瑠璃(七之助)の初々しい会話が
ちょっと照れくさかったです(笑)。
でもやっぱりこのご兄弟はいいねえ、
見てるだけで幸せ。
ただ、血気盛んでトラブルメーカーの弟(松也)がいる時点で
精之助にはすでに最初から
悲劇の結末フラグが立っているので、
そういうほのぼのした場面もなんかせつないんだわー。
クライマックス、精之助にとりすがる瑠璃が
緋色のぎやまん飾りのついたかんざしで後を追うんじゃないかと
はらはらしながら観ていたんだけど、
瀕死の精之助は
「あなたが行かなければ、あなたの国や家族はどうなる」
と彼女を諭し、パリ行きの船へと背中を押すんだよね(涙)。
人質として薩摩へ渡り、慕う人の最期もみとれずに
異国へ嫁いでいく瑠璃。生きろ。がんばれ。
遠ざかる船を見送りながら
「きっとこれから新しい時代がくる」
とばかり、爽やかに立ち腹を切った精之助に涙しながら、
いつか勘太郎ちゃんにも
明治まで生き残れる役をやらせてあげたいと
思ったのだった…。


ふたつめは舞踊劇『越前一乗谷』。


越前領主、朝倉義景橋之助)の妻である
小少将(福助)が尼となり、
それまでの悲劇を追想するんですが、
舞台が八百屋になってたり、
くるくるまわる盆の上で群舞があったり、
合戦の場面ではほんとうに馬に乗っているような
大迫力の振付で、すごく斬新でおもしろかった!
小少将も、『磯異人館』の瑠璃と運命が似ていて、
夫を失い子供を殺され、敵に引き渡され、
それでも夫の残した「なにがあっても生きろ」という言葉で
現世にとどまる決意をする女性。
最後、真っ赤な紅葉の下で
義景の幻がすっと現れて尼姿の少将の横に並び、
でもまた花道のセリに沈んでいってしまうのが
すごくかわいそうで、ここでも
少将、生きろ。がんばれ。と思ったのだった。


ちなみに、物語以外で気になったことは、
あの亀蔵さんがイギリス人の役で
役名がハリソン、
しかも遠目に生瀬勝久だった件。
そして、精之助の無二の友だち才助として
舞台をがっちりとしめていた猿弥さんが
遠目にドランクドラゴンの塚地だった件。