こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

お茶の水から下北沢へ

午前中からのお仕事が終わって、
おなかがすいたので、
なつかしの中華料理屋さんに来てみました。


御茶ノ水の「太一」。


絶品五目ワンタンメン、うわあ何年ぶりだろう。
ちょっと目を離した隙にすっかり様変わりしていて
朝から面食らってばかりの駿河台ですが、
おお、この味は変わらないな。




続いてアテネフランセへ。
前の会社時代、
ここの早朝語学レッスンに通おうとして
眠すぎて数回でリタイアしてしまった
恥ずかしい思い出がございます。


この4階にある文化センターで
昨秋亡くなったドキュメンタリー映画監督
松川八洲雄さんの追悼上映会。
監督の娘さんである映画アナリスト・まつかわゆまさんが
インタビュアーをつとめるトークタイムは、
監督のおともだちだった土本典和監督のとつとつとした優しいお話と
清々しくリズミカルなゆま節のコラボがまったりとして居心地がよく、
ゆっくりした時間のなかで
お会いしたことのない松川さんの姿を想像する
不思議な楽しさ。
終わって廊下にでたら、ここも、次の上映時間を待つ
新旧ともに現役の「映画青年たち」で
溢れかえっていました。



新お茶の水駅から千代田線に乗ろうとして、
その目前の細道で、
もしかしたらこのへんじゃなかったかと
ビルの入り口をのぞいたら、
やっぱりあった、
居酒屋「よかよか」とイタリアン「ピッコロタイガー」。
夜に通ったよかよかと、
昼も夜も通ったピッコロ。
「こんちわっす」の店員さんまだいるのかなあ。
ニコライ堂。カラオケジョッコ。純喫茶ミロ。
おーおーおー。
またゆっくり来よう、お茶の水。


で、1日の締めくくりは
下北沢の本多劇場で「月の子供」観劇です。


月に子供がいたとして。
その子供は、小さな星の小さな引力にあわせて
骨も筋肉も小さく小さくなってしまう。
そんな子供が、もし急に地球に連れてこられたら、
その肉体は大きな星の引力に負けて
ぺしゃーっとつぶれてしまう。
同じように、
耐えて耐えてマイナスの中で生きてきた人間は、
突然のプラスを支えきれずに
ぺしゃーっとつぶれてしまう。
そんな悲しい力学的矛盾を、
ひとさじの強い希望を加えて描いたお芝居にみえました。


プラットホームの下。
プラットホームの上。
マナちゃん、カナちゃん。
三倉さんちのマナカナちゃん。


この美しくいたいけな双子は、
驚くべき繊細さでひとりの「少年」の表裏を演じて、
ときにはふたりの「少年」の危なっかしくも魅力的なやりとりを演じて、
はじめから最後まで目が釘付けでした。
マナちゃんはインナーな感じで、
カナちゃんはアウターな感じで。
でもそれはお芝居のうえの話であって、
ほんとうのマナカナはまた別のところにいるに
違いないのだけれども。


プッシュプッシュ、プルプルは、
秦建日子作品のキーのひとつなのかもしれません。
開演前に舞台上にあらわれ、


「一部の私鉄が遅延しているので、すこしだけ開演を遅らせます。
 時間までにきてくださったお客様、ごめんなさい」


と挨拶した姿が、秦さんらしかった。


プッシュプッシュ、プルプル。
押してだめなら、ひいてみろ。
私も明日からやってみます。