こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

ヒール上等

劇団☆新感線『朧の森に棲む鬼』。

口先で世を渡っていこうとする若者ライ(市川染五郎)は、
森の中で出会った3人のオボロの言葉をきき、
その後すぐに現れた武将を手に掛ける。
そこから彼の出世劇がはじまるが、
偽りに偽りを重ねて登りつめたその先には
自らの転落が待ち受けていた…。

マクベスよりも気丈で、
リチャード3世よりも美しい男ライの転落劇。
ライ=嘘、なんでしょうねえ。
出世していくたびに化けの皮がはがれて
恐ろしい本性を現すライですが、
クライマックスで自分の首を絞めることになった「落ち度」が、
運命的に仕組まれたものだったのか、
それとも自分ではそれと自覚しない仏心によるものだったのか。
どっちなんでしょう。

染五郎さんの美しかったこと。
ヒール(悪役)だけど、考えたら
歌舞伎で悪役は華ですもんね。
非情ければ非情いほど人気があったりしますし。
阿部サダヲさんの声はほんとにいいですねえ。
なんで最近の役者さんって
「えええ〜」っていうリアクションがうまいんだろう。
古田新太さん久しぶり。
そこでその顔するか、っていうのがたまりません。
そして水を吹いていた。また木野花さんに
「ほらね、この子はこういうことができるのよ」って
言われることでしょう(笑)。
秋山菜津子さん、このうえなくりりしい。
真木よう子さん、存在感鋭し。
高田聖子さんの演じた式部はリアルでとっても恐ろしく、
かわいそうでした。
もっとかわいそうなのは田山涼成さんの演じた
いっちゃん(一宮様)だけどね。
式部がついだ杯に毒が盛られていることをわかっていて、
笑いながら「これ、飲むけどさ。
あの男はやめたほうがいいよ。これ、飲むけどさ」
には泣きました。