こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

猫だいすきフリスキー

ウィー・トーマス』再演@パルコ劇場。
イニシュモア島。車に轢かれて死んでしまった黒猫ウィー・トーマス。飼い主はIRLAの自称”少尉”「気違いパドレイク」、トーマスが死んだと知ったら切れるのは必然です。彼の父親をはじめ、周囲の人間がそれぞれに策を練るほど事態は悪転し、ついには血みどろの地獄絵図に…。

アイルランドなんですね、空の色が。波の音が。登場人物たちの異常な思考回路も、だってあの頃のアイルランドだしな…と思うと、なんかしかたがない気がしてくる。そんなふうに納得するのは危険なことかもしれませんが。
ほんものの猫が2匹出てきます。茶色いサー・ロジャーと、黒いウィー・トーマス。2匹とも、今回もまたいいところでニャーニャー鳴くんだね。さすがに重要なところの鳴き声は効果音なのかもしれませんが、だとしても、「うわ、フロスティいらね!」みたいなフリとか、死体の散乱する部屋を見渡して「…で、どうしたのこれ」な風情なんかも、いったいどうやって演技指導してるんだろう。猫、すごい。デイビー役の少路勇介さんは猫慣れしてるのか、抱き方がとても上手だったな。サー・ロジャーが木村祐一さんの襟元をきゅっとつかんだ時は、周囲の席から声にならない声で「か、かわいい〜…(猫もキム兄さんも)」。
キム兄さんといえば、ずいぶんとお肌がきれいな方なんですね。ざっくり編みのカーディガンがとてもよく似合ってました。印象に残ったのはブレンダン役のチョウソンハさん。気持ちよく、スパーッと飛び込んできます。富岡晃一郎さんも本物を初めて観ました。なるほど、ちょっといじめたくなる。でもいじめたらすぐ泣いちゃいそうだ、トミー。いじめないでおこう。

再演ものを観てると、初演のときの絵柄が同時進行で脳内再生されちゃう瞬間があります。たしか客席の最後列から観た3年前のパルコ初演。椅子に座る板尾さんの姿、中山くんの語尾。逆さ吊りにされてる保村さんの胸元がどんどん赤くなっていくんで気が気じゃなかったな。北村有起哉のパドレイク。ああそうだ、あれユッキーだったんだ。曲線的で、パドレイク自身が猫みたいでした。マレード役の佐藤康恵ちゃんと並ぶと、ふたりとも、手も足も首も長くって、その風情が灰色の空や海の寂しさにマッチして、どんなに破壊的な言動もちょっぴり愛しかったんだよねえ。
あれから3年ですか。変わったり変わらなかったり。
っていうか戻ってきたのか。
そんなスプラッタな夜。