こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

戦い終えて『LAST SHOW』

サッカー、クロアチア戦。同点か…。
みんな頑張っているのにタイミングがずれたまま。本番どんぴしゃにテンションの頂点を持ってくるのがどれだけたいへんかってことですよね。冬季オリンピックのときのスケート荒川さんが成し遂げたことは、本当にすごかったんだなあ。
残すところあと1戦。とはまだ言いたくないのだが、とりあえずブラジル戦では、スーパーハンサムGK川口の天然ボケをどうにかしたい、そんなワールドカップ。
っていうか、どこにいるの、オリバー・カーン

微妙な気持ちのまま寝るのがいやだったので、こんなときこそ原稿やっちゃおうぜと思い、パソコンをたたきながらWOWOW深夜の『LAST SHOW』を流し見。
…するつもりがガン見してしまいました。
すごいよー。怖いよー。そして哀しい。
確かに、タクヤ(北村有起哉)のような無邪気さや優しさの純度が極端に高いタイプの人間は、時としてその存在じたいが凶器となり、誰かをひどく傷つけてしまうことがあります。彼の未熟な正義感や押しの弱さ、いい年をしていまだ「なんかねえ、なんか、凄いの撮りたいんだよね!」みたいなレベルの台詞を恥ずかしげもなく言えてしまう青くささ。確かに、諦めをもって現実と折り合いをつけてきた周囲の人間を苛つかせるにちがいありません。けれども、だからといって彼のその善良な生き方のひとつひとつが、これほどまでに実父・カツヤ〈風間杜夫)のなかに憎しみを増長させてしまったのはなぜなのでしょう。父との久しぶりの再会や妻の吉報に子供のように喜んだ直後、彼のおかれた状況は激変します。いったいなにが起きているのかわからないという表情で戸惑いつづけ、ついには父親の「おまえのせいで俺の人生はむちゃくちゃだ」という言葉に打ちのめされる。放心して床に座り込む彼の姿に、喉の奥がぎゅっとつまるような思いがします。一方で、あらん限りの憎しみをこめてタクヤを睨みつける父親の視線。あの「執着」を、なにかの拍子に「愛情」に逆転させることはできなかったのかな。「執着」は、「無関心」よりもよっぽど「愛情」に近いところにある気がするんだけれども。無理か。無理だよな。
男と女。子は親を、親は子を選べない。「俺は、おまえと闘ってるつもりでいたけど、ほんとうはひとりぼっちとやっていたのかもな。タクヤ」。タクヤ。この「タクヤ」の寂しい響きです。お父さん、とことん孤独な人生だったんですねえ。めちゃくちゃにもつれていく男たちのなかで、ミヤコ(永作博美)の母性がかろうじて軌道修正を試みるんだけれども、それもこの状況を救うことができないまま、舞台は幕を閉じます。いや、ある意味救われたのかな。救われたのかもな。ギリシャ神話のような物語でした。

最後に作・演出の長塚圭史さんのインタビューがあったのですが、話し方がときどき怖いくらいお父さん(長塚京三)に似ています。そしてヒュー・グラント級のたれ目。
ちなみに、彼をもってして、
「お願いしますよ、北村さん」
と言わしめた有起哉さん(風間談@メタルマクベスパンフレット)。泣いて叫んで暴れてものすごいことになってても、なんていうか。
美しい人ですね。