こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

やりなおし

映画『この胸いっぱいの愛を』。映画や芝居や本のタイトルは、こういう口にするのがちょっと照れくさいものだと話題にしづらい。参ったなと思っていたのだけども、この言葉は、終盤の台詞のなかに出てくるのでした。重要なフレーズだったのですね。タイムスリップとか実はこうだったとか、そういうのは決して新しいエピソードではありません。でも、それを承知で撮りたいものをとても丁寧に撮りました、という感じの温かい作品でした。それと、タイムスリップもののお約束で、最終的に必ず辻褄のあわないところがでてくるのですが、この話を観ているとそんなのもどうでもいい問題に思えました。『蝉しぐれ』に「しかたがない、ひとは後悔するようにできてるんだ」というような台詞があります。そのとおりで、時間を巻き戻してやり直せたらどんなにいいだろうということは誰にでも、尽きぬほどあります。主人公を含む4人は、その後悔のなかでも「どうしてもそのままにしておけないこと」があるためにタイムスリップするのでした。私もウスイ(宮藤官九郎)みたいに、過去に戻って「ごめんなさい」を言えたらいいなあ…。子供時代のヒロや和美が感情を高ぶらせるとまさに手をつけられない状態になります。それが、簡単なドラマ手法ではまったく片づかないのはリアルでした。終わる人生と続いていく人生、そのどちらも、青空のように晴れたものにはなり得ない。だからこそ映画のラストシーン、次にそんな世界があってほしいという希望が持てるんですね。