こまりさんの、はらぺこ手帖

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

黙っていろ


東京国際映画祭。映画祭というものに初めてでかけてみました。ドイツ映画…オーストリア映画か。「シレンティウム」。ザルツブルグのカトリック系寄宿学校を舞台に、そのバックにある教会と、町を牛耳る音楽祭界の癒着と腐敗を描きます。タイトルの「シレンティウム=Silentium」は、この学校のバスルームのドアの上に貼ってあるラテン語の戒めです。「静かに」ともとれるし、「黙っていろ」ともとれます。グロテスクな殺人や背徳行為が黙認されていく恐ろしさ。この事件を追うのが、ダメダメ私立探偵ブレンナーとその相棒ディアテ。このふたり、おなかが出始めなら頭も来始めで、ものすごくくたびれちゃったあぶない刑事みたい。サインもすぐには通じなくて「え?なに?なに?」ばっかりだし、そういうのがいちいち可愛らしいんですよね。ブレンナーがちょっと気にしているらしい薬局の女性もいい感じ。そのため、暗くなりがちな物語を救っている、というか、かなりコメディーにしています。ダメダメ加減もかえって色っぽくみえたので不思議だな。さすが映画祭と思ったのは、終映後にティーチインがあって、ワールドセールス担当の金髪美女が質疑応答に応えてくれました。ドイツのベストセラー小説が原作だそうで、なるほど登場人物のキャラクターづけがしっかりしているわけです。質問者のなかに「この映画は、教会の腐敗をものすごく極端なフィクションで描いていて、カトリックとしては納得がいきません」と怒っている(といっても紳士的に)方もありましたが、それに対し金髪美女は「いや、だってフィクションだから」と応えていました。そりゃそうだ(笑)。人間って白とグレーと黒のマーブル模様でてきているのに、宗教がそれを「まっ白にしろ!」という強力なストレスを与えると、絶対そのひずみで「まっ黒」な部分が生まれてしまうんだよね。人間のアベレージってそんなに崇高なところまでは持っていけない。理想主義の真ん中にいると、それがだんだんわからなくなってしまうんだろう。それだったら、ブレンナーたちのような「一生スパムの繰り返し」みたいな生き方のほうがよっぽど自然だと思うんだけど。