こまりさんの、はらぺこ手帖

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

シェイクスピアは飯の種

シアターコクーンにて『天保十二年のシェイクスピア』観劇。井上ひさし作、蜷川幸雄演出です。6時30分開演、終わったのがほぼ11時。だけどお尻が痛くなるどころか、観ているあいだじゅう思っていたのは「ああずっと終わらなきゃいいのに」でした。歌と踊りもてんこもり。楽しかった!タイトルどおり舞台は天保十二年の日本で、ここにシェイクスピア全37作品すべてを切ったり貼ったりして盛り込んでいるという、とんでもない作品です。たとえば、あたかも『リア王』を思わせる極道の親分(吉田鋼太郎)と長女(高橋惠子)、次女(夏木マリ)、三女(篠原涼子)がいます。が、物語が進むと長女のところは夫をその弟(西岡徳馬×二役)に殺させてそこへ息子(藤原竜也)が帰って来て『ハムレット』になり、次女のところは男(勝村政信)をたきつけて人殺しをさせる『マクベス』かと思うとのちには誤解が嫉妬を生む『オセロー』に展開し、三女には双子のかたわれが現れて、七月歌舞伎座を彷彿とさせる『十二夜』感動の再会。たまらないですね。なかには、バサッと斬られて「バッサーにお!」(笑)なんてのもあります。藤原ハムレットが「To be, or not to be...」の歴代の和訳パターンを全部披露してくれたのですが、古ければ古いほどしっくりきます。聖書とかお祈りの文言が、わかりやすくなった現代訳より、わけわからなかった以前のもののほうが「らしかった」のと同じか。木場勝己さんは、校長@金八では圧政側だったのに、今回は一般貧民代表の狂言まわしをつとめています。棺桶職人の高橋洋さんのリズム感と筋力にも驚きました。圧巻は、足をひきずり、あざのある顔に目だけをらんらんと光らせたせむしの三世次の唐沢寿明さん。イアゴーでありリチャード三世である三世次は闇のなかをたちまわり、代官にまで出世するのですが、老婆(白石加代子)の予言どおり「ひとりでふたり、ふたりでひとりの女」に思いを寄せたがため、ついには自滅します。悲しかったなあ。どうしてリチャードっていうのは、あれだけ悪くてなお魅力があるんでしょうか。

12月にWOWOWで放映予定だそうです。