こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

山内圭哉への長い道のり(4)

姫が愛したダニ小僧』。


後藤ひろひとさん率いる劇団Piperの、
1998年の旗揚げ作品。
初演時のタイトルはその名のとおり『Piper』、
それが今回『姫が愛したダニ小僧』として
リメイク上演されることになったのだそうです。


天王洲に向かうモノレールのなかで、私は
2年前に帝国劇場に向かっていたときと同じように緊張していました。
早く出かけすぎて妙に時間が余ってしまい、
その空白に耐えかねてロビーで一杯。
1ベル、2ベル。
バグパイプのアイリッシュなメロディが流れるなか、落ちていく客電。
いよいよ開演です。


廃墟ビルで暮らす謎の男(後藤ひろひと)は、
自分の住む階から飛び降りようとしているサラリーマン(ラサール石井)を
みつけます。
飛び降りるなら、どうにかして他のビルからにしてほしいと頼む男。
しかしサラリーマンは、
さえない人生に、生まれたこの街この場所で終止符を打ちたいんだ
といってききません。


一方、亡くなった祖母の遺品を引き取りに
老人ホームを訪れた祐一(ユースケ・サンタマリア)とエリ(佐藤康恵)は、
不思議な老婆(富田靖子)と出会いました。
老婆はみずからを「すみれ姫」と名乗り、
祐一を「船長」、エリを「洗濯女」と呼んで再会を喜びます。
あまりにひどいホームの待遇を見かねて
彼女を“誘拐”したふたりではありましたが、
もちろん「船長」だった覚えも「洗濯女」だった覚えもなく、
彼女の話は老人の妄想としか思えません。


このふたつの物語が並行して進んでいきます。
謎の男と話しているうちにだんだんと死ぬ気がなくなってくるサラリーマン。
そして、その昔恋をした笛吹きの「ダニ小僧」を探すため、
かつての仲間探しに燃えるすみれ姫のペースに
完全に巻き込まれる祐一とエリ。
まずは森の中で甲冑姿の騎士・城一郎(高杉亘)をみつけると、
次の捜索ターゲットはサラリーマン剣士・橋本けんじくん。


…「橋本」?


と思った矢先、舞台の左奥から、


「○×□△※%、○×□△※%、○×□△※%…」


ここには書けない台詞を繰り返しつぶやきながら
橋本けんじくん登場。
彼こそまさに、山内圭哉その人だったのです。



(つづく)