こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

山内圭哉への長い道のり(1)

近藤勇(香取慎吾)は、市中でたまたま顔をあわせた
坂本龍馬(江口洋介)と橋本左内山内圭哉)を
自分の家、市ケ谷の試衛館に招きます。
龍馬はいわずもがな、水戸藩出身の橋本もまた
幕府の内情にも通じた精鋭の若き侍。
しかし対する勇のほうは、気持ちばかりは大きくても
いまだ小さな道場の跡取りに過ぎません。
ふたりの客人を前に、
少しでもいいところをみせたい、同等に話をしたい…
そこへなだれこんできたのは
コマの勝負に負けて顔に墨を塗られた源さん(小林隆)と
その源さんになおも追い打ちをかけようとする沖田総司藤原竜也)でした。
危機迫る日本の将来と、まるで子供の遊び場のような田舎道場。
そのギャップにがっくりと肩を落とす勇の傍らで橋本が、
なおもはしゃぎまわる総司と源さんを眺めながらつぶやきます。


「若さとは、いいものですね」



昨年のNHK大河ドラマ新選組!』のひとコマです。
これをうけた勇の
「あっちの人(源さん)はちっとも若くないんですけどね!」
という苦しそうな台詞もたいがいおかしかったのですが、
橋本のひとこと、勇の気持ちを察したかのような素朴で優しい感想が
静かに胸を打った。


この場面が、役者・山内圭哉(やまうち・たかや)との出会いでした。
誠実そうな佇まい、浮わつかない台詞まわし。
座るときにさりげなく腰のものを抜きはずすしぐさも決まっています。
くっきり通った立派な鼻筋といい、大きく意志的な瞳といい、
たった1回きりの出演だったにもかかわらず
その印象は鮮やかでした。
おそらく、文学座とか青年座とか、そういうたぐいの劇団で
きっちりと基礎を積んだ役者さんに違いない。
どこかの舞台でもういちど観てみたい。
ちょっと調べてみよう。
パソコンに向かった私は、その検索の結果判明した事実に
がく然としたのです。



劇団Piper所属の山内圭哉は、
奇天烈なモヒカンカットで放送禁止用語を連発する、
関西系の怪優である。



(つづく)