こまりさんの、はらぺこ手帖。

なんでもないようなことが、しあわせなんだとおもう。

卵投げ

ルテアトル銀座で『ビリーとヘレン』を観ました。


舞台はアラン諸島の小さな島のひとつ、イニシュマーン島。
アイルランドが舞台の物語っていうのは
それだけで独特な…厳しいっていうのか、荒涼としているというのか、
それでいてホーリーで温かいところもあり。
まさにそういう感じの芝居だった。


生まれつき体が萎縮している少年ビリーは、
ふたりの叔母に愛され暮らしていたが、
あるとき隣のイニシュモア島(まぎらわしいな)で
映画の撮影があるときいて衝撃を受け…。


ビリーを演じているのは舘形比呂一さん。
鍛え抜かれたダンサーなので、
縮こまった手や足が目をそむけたくなるほどリアルなんだけど、
しばらくするとそれが
とても自然で美しくもみえてくるから不思議だ。


登場人物たちはどの人も善悪表裏一体。
善悪、というより
思いやりと残酷さがすぐ隣り合わせているみたい。


ビリーは物心つかないうちに両親を海で亡くしていて、
それは「僕から逃げたくて自殺したんだ」と思いこんで
深く傷ついている。
事実はそれよりさらにむごいことがのちにわかるのだが、
そのとき同時に、
思いがけない人物の思いがけない優しさ
(ちょっとそれは想像を裏切るくらいの)が判明したりして驚かされる。


ラストはなんだか啓示的な悲劇で終わってしまうけど、
カーテンコール、
ずっと縮こまっていたタテさんの手足がすーっと伸びて、
ひとりひとりのキャストと笑顔で抱き合うのをみていると、
ああみんな自由になったんだ、という気がして胸がすいた。


ビリーが密かに恋をする
凶暴な美少女ヘレン役の絵麻緒ゆうさんは、
卵を投げまくって大暴れ。
そういえば去年の舞台『I LOVE YOU 愛の果ては?』でも、
ぶちきれて花束を投げ捨てるシーンがかわいかった。
投げ上手!


ちなみに元々この役は斉藤由貴ちゃんが演じるはずだった
(ご懐妊されたため残念ながら降板)。
いつかサイト−さんの顔と声でもヘレンの卵投げを観てみたい。
あと、ヘレンの弟で、
ミント飴とフルーツグミ
パチパチオレンジと望遠鏡が大好きなバートレイ役には近藤芳正さん。
すごい、子供にみえるよコンちゃん(笑)!
ビリーに「人を笑ったりしちゃいけないよ!」と怒られても
きょとんとして
「え、どんなにおかしくても?」と聞き返すところが、
特に印象的でした。